視覚障害＜４＞

目の病気＜４＞

未熟児網膜症
１　疾患の概念: 　満期で生まれてくる新生児は、網膜の血管が眼底の周辺部まで伸びてから生まれてきますが、未熟児では血管が途中までしか発達していません。この状態で高濃度の酸素を供給すると、網膜血管末梢部が詰まり、酸素供給中止後に強い低酸素状態が起こります。その結果、血管新生、滲出、出血が起こり、それが次第に瘢痕収縮して網膜を引っ張って網膜剥離を生じます。網膜血管の発育は耳側で遅いので、網膜症も耳側に発生する事が多いのです。
　未熟児網膜症には、進行の遅いⅠ型と、非常に早く進行するⅡ型があります。Ⅰ型の場合には、網膜症がかなり進行しても、ほとんど自然治癒します。Ⅱ型は自然治癒傾向が少なく、主として極小低出生体重児の未熟性の強い眼に発症します。
２　症状: 活動期と瘢痕期があります。
(１)活動期
「第１期」（血管新生期）：眼底の周辺部に異常な血管が新しくできてきます。それよりさらに周辺部には血管がありません。
「第２期」（境界線形成期）：血管のある部分と無い部分との間に境界線ができます。
「第３期」（硝子体内滲出）：境界線から異常な組織ができてきて、眼球内の硝子体内へ入っていきます。
「第４期」（網膜剥離期）：異常な組織が網膜を引っ張って網膜が剥離します。
このような順序で進行する比較的良性のⅠ型と、極小未熟児に発生して第１期から第４期まで急速に進むⅡ型があります。

(２)瘢痕期
　活動期Ⅰ型の２期までのものは大部分、視力に影響を及ぼすような不可逆性変化を残さずに自然治癒しますが、３期のものやⅡ型は種々の程度の瘢痕を残します。瘢痕期の程度は次のように分類されます。
「１度」：眼底の周辺部に軽度の瘢痕性変化（色素沈着、網脈絡膜萎縮など）の見られるもので、視力はほぼ正常。
「２度」：視神経乳頭が耳側に引かれ変形しています（牽引乳頭）。視力は黄斑部が健全な場合は良好ですが、黄斑部に病変が及んでいる場合は種々の程度の視力障害があります。
「３度」：視神経乳頭より周辺部に向かって網膜のひだができます。視力は0.1以下。
「４度」：水晶体の後方に一部白色の組織塊が見られます（水晶体線維増殖症）。視力障害は高度です。
　完全な水晶体線維増殖症だと、視力障害は最も高度となります。
第３期に、光凝固等の治療が行われる事が多いです。
４　教育上の支援: （１）晩期合併症への注意
　６～１５歳頃に、晩期合併症として網膜剥離、緑内障、強度近視等が起こることがあります。長期にわたる経過観察が必要であり、特に義務教育段階では、眼科への定期的な受診が望まれます。
（２）視力・視野の配慮
　瘢痕の状態により、視力の低下や視野が狭くなることがあります。一人一人の見え方の状況に応じて、見やすく学習できるように文字サイズ、見る範囲、色彩、照明等の配慮が必要となります。また、見え方によって、全盲の幼児児童生徒への学習と同様の支援を行う場合もあります。
（３）『眼押し』への配慮
　眼を指で押す行為は、未熟児網膜症においてもみられることがあります。幼児期から学齢期にかけて顕著にみられますが、年齢が経過するとともに減少していきます。手指を使った学習や遊びを行ったり、運動したりしながら、眼押しをしないような環境を作るように配慮していきます。
３　日常生活の留意点: 　網膜剥離が起こる事があるので強い打撲をしないこと、また、白内障や緑内障を生じる恐れもあるので定期的に眼底検査を受ける事が大切です。
５　参考文献: (１)「眼疾患　説明の仕方と解説」　金芳堂　
(２)「現代の眼科学」　金原出版
(３)「リハビリテーション医学全書１２　視覚障害第２版」　医歯薬出版
(４)「視力の弱い子どもの理解と支援」　　教育出版

網膜芽細胞腫
１　疾患の概念: 乳幼児の眼球内に発生する悪性腫瘍で、大部分は２～３歳頃までにみられます。
２　症状: 瞳孔が猫の眼のように光って見えます。
初めて気付くその他の症状として、斜視、視力障害、角膜混濁、結膜充血などがあります。腫瘍が小さい場合は、放射線照射、光凝固などで比較的よく治ります。腫瘍が大きくなると、眼球を摘出しなければなりません。放置しておくと、脳や全身のいろいろな所に転移します。
３　日常生活の留意点: 医療機関での定期的な経過観察が必要です。
眼球摘出後の義眼装着の管理とケアが必要です。
４　教育上の支援: 他の眼疾患と同様に、全盲の幼児児童生徒における学習を支援していくことが重要となります。具体的には、点字の学習、空間概念・歩行の学習、日常生活動作の向上にむけての学習等があります。
５　参考文献: （１）「眼疾患　説明の仕方と解説」　金芳堂
（２）「現代の眼科学」　金原出版
（３）「視覚障害教育に携わる方のために」　　慶應義塾大学出版会

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