視覚障害＜２＞

目の病気＜２＞

角膜混濁
１　疾患の概念: 角膜は本来透明なものですが、いろいろな原因で混濁します。これが角膜混濁です。混濁には部分的なもの、広範囲に及ぶものがあります。混濁の淡いものを角膜片雲、さらに濃いものを角膜斑、濃い混濁を角膜白斑とよびます。
（原因）
（１）先天性
　出生時から存在する角膜混濁では、発育異常による奇形、胎児期の角膜炎、出生時の鉗子分娩による場合があります。
（２）遺伝性
　遺伝性の角膜の変性で、出生時には異常はありませんが、小児期から青年期にかけて発病し、次第に角膜が混濁してきます。角膜ジストロフィーと総称します。
（３）栄養障害
　角膜軟化症といわれます。ビタミンＡ欠乏が原因。麻疹や肺炎などで、全身が著しく衰弱したり、栄養が不良な場合、発病することがあります。
（４）炎症
　先天梅毒、トラコーマ、ヘルペス、結核、ブドウ球菌などの角膜の炎症の後の瘢痕が原因で起こります。
（５）外傷
　切傷、裂傷、熱傷、酸やアルカリによる腐蝕などが原因で起こります。
（６）眼瞼疾患
　眼瞼内反、睫毛乱生、眼瞼外反などが原因で起こります。
２　症状: 　角膜が混濁すると光が眼内に入りにくくなるので、視力が障害されます。全体が暗く、しかも網膜上にぼんやりとしたゆがんだ像しか映しません。角膜混濁が淡い場合には、それで光が遮られるというよりも、角膜表面が凸凹していて乱視になっており、そのために網膜に映る像がピンボケの状態になることの方が、視力に大きく影響します。
　角膜が混濁していても、眼底など眼球の奥の方はそれほど障害されていないことが予想される場合には、角膜移植手術の適応になります。
３　日常生活の留意点: 特別のものはありません。
角膜片雲ではコンタクトレンズを装用した方がよいので、レンズのケアが必要です。
４　教育上の支援: 　見え方の特徴は、外界が暗く、コントラストが低下して見えるので、その配慮が必要です。室内の照明を明るくすることが大切ですが、あまり光が強すぎるとまぶしさが強すぎて見えにくくなってしまいます。拡大読書器やパソコンなど白黒反転をしたほうが見えやすくなります。また、単眼鏡を使用することも有効です。
　容姿が気になる場合は、着色コンタクトレンズやサングラスをかけることで目立たなくなります。
５　参考文献: （１）「リハビリテーション医学全書１２　視覚障害第2版」　医歯薬出版
（２）「現代の眼科学」　金原出版
（３）「視力の弱い子どもの理解と支援」　教育出版

網膜剥離
１　疾患の概念: 　網膜の一番外側の網膜色素上皮と、残りの神経網膜との間に水分がたまり、神経網膜が網膜色素上皮からはがれる病気です。時間とともに剥離部分がどんどん広がり、放置しておくと失明に至るので、早期の治療が大切です。網膜剥離には、網膜裂孔が原因となる①「裂孔原性網膜剥離」と、裂孔以外の原因で起こる②「非裂孔原性網膜剥離」があり、非裂孔原性網膜剥離は更に、「滲出性網膜剥離」と「牽引性網膜剥離」に分けられます。
　裂孔原性網膜剥離とは、網膜が裂けたり萎縮して孔があいたり（網膜裂孔）して、そこから硝子体の水分が入り込んで網膜がはがれてしまったもの。網膜剥離の多くは、この網膜裂孔が原因で起こります。滲出性網膜剥離は、網膜色素上皮が損傷を受け、脈絡膜側から水分がしみ出て起きたものです。牽引性網膜剥離は、硝子体側に問題が生じ、網膜と硝子体との癒着を介して、網膜が硝子体に引っ張られる事で起こる網膜剥離の事です。非裂孔原性網膜剥離は、裂孔原性網膜剥離に比べるとそれほど頻度は高くありません。
２　症状: 　網膜剥離の前兆として、目の前に黒っぽいゴミのような物がちらつく「飛蚊症」が起こる事があります。また、目をつぶった時や、暗い所で視野の端に光りがピカピカして見える「光視症」を自覚する事もあります。視野が欠ける「視野欠損」は、普通、視野の端から始まり、剥離が進むにつれ広がってきます。障害の程度やスピードは個人差があるので、急激な視力低下や視野欠損が起こるまで気付かない場合もあります。但し、最初から網膜の黄斑部に円孔が生じて剥離が起こった場合は、早い時期から視力低下が起こります。
　網膜剥離を起こしやすい人とは、①４０才以上の人・・・網膜剥離は加齢が原因で起きる事が少なくありません。年をとると「後部硝子体剥離」が起こりやすくなるためです。網膜剥離のピークは４０～６０才台です。②強度の近視がある人・・・若い人でも強度の近視があると、網膜剥離は起こしやすくなります。近視の人は一般的に眼球の奥行きが大きく、その分だけ網膜が伸びて薄くなっているために、破れやすいからです。２０～３０才台の強度近視の人に多く見られます。③白内障の手術を受けた人・・・普通の人に比べて硝子体の変性が若干早くなるので、後部硝子体剥離が起こりやすくなります。これらの人は、前述の自覚症状が現れたら、早急に眼科を受診することが重要です。

※後部硝子体剥離・・・年をとるにつれて、硝子体は変性（液化）し、コラーゲン線維などのたんぱく質と水分が分離して、縮みやすい状態になります。硝子体の液化自体は加齢現象なので異常ではありませんが、液化が一定の域を超えてしまう人がいます。すると、突然、硝子体が前方に向かって萎縮し、硝子体後部が網膜からはがれてしまいます。これを「後部硝子体剥離」と言います。後部硝子体剥離が起こると、萎縮した硝子体の不均一な後面が影となって網膜に映し出され、飛蚊症を自覚する事もありますが、後部硝子体剥離自体は治療の対象にはなりません。しかし、萎縮した硝子体に網膜が引っ張られて、網膜剥離が起こると治療が必要です。
３　日常生活の留意点: 　網膜剥離のほとんどは眼底検査で診断がつきますが、剥離がごく軽い段階にある時は、検査をしても見つからない事がまれにあるので、症状が続く場合は繰り返し検査を受ける事が必要です。また、剥離した網膜は次第にその神経組織が傷んでしまうので、剥離が治っても視力回復が不十分な場合があります。従って、網膜剥離は早期発見が非常に大切です。
　また、網膜剥離を一度経験した人の５～１０％は再発をしてます。そして、もう片方の目に起こる確率も高いので、毎朝白い壁を見て、左右の目で見え方が違っていないかチェックをします。いつもと違っていたら、すぐに検査を受けましょう。４０才以上で強度近視のある人も、年に１回は眼底検査を受けましょう。
４　教育上の支援: 　本人が眼球を強く押したり、こすったりすることがないように注意していくことが必要です。また、目をぎゅっとつぶったり、光を急に見たりすると網膜剥離の誘因になります。
　眼部打撲の危険のある運動などは、極力避けるようにしましょう。周りの人たちも気をつけてあげることも必要です。
５　参考文献: (１)「眼疾患　説明の仕方と解説」　金芳堂　
(２)「現代の眼科学」　金原出版
(３)「別冊NHK きょうの健康　目の症状, 目の病気」 NHK放送出版協会
(４)「視力の弱い子どもの理解と支援」　教育出版

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