これまでの取り組みについて

今年度は「キャリア発達の視点を踏まえて」という副題で取り組んできた研究の3年目であり、まとめの年度です。
ここでは、これまでの研究の過程を少し振り返ってみたいと思います。

 本校の教育課程の特徴は、2つのステージによって構成されていることです。そして、2つのステージを結ぶのが
「キャリア発達の」視点です。(下記図参照)

1年目は、「キャリア発達」の視点から、学習指導のあり方について検討を進め、同時に支援方法の研究を進めることをねらいとしました。普通教科部会、特別活動部会、ST学習部会の3部会を設け、上記のねらいに向けた取り組みを進めました。ここで初めて、「キャリア発達に関わる諸能力(人間関係形成能力・情報活用能力・将来設計能力・意志決定能力)」を実践の視点としました。

 2年目は、「ST学習」(総合的な学習の時間での本校の名称)で総合される力を、教科・領域の指導の基礎・基本を学ぶステージの中で、どのように育成したらよいかということを課題にしました。ここでは、「キャリア発達に関わる諸能力」をどう育てるかという視点を踏まえることで、教科別の指導の充実が図られるのではないかと考えました。そこで、これまでに取り組んできた教科別の指導の指導・支援内容について、「キャリア発達」の諸能力との関連を明確にすることにしました。こうして作成したのが「指導・支援内容とキャリア発達との関連表」です。また、その関連から「キャリア発達段階表」の作成へと進み、それらを活かした指導のあり方の検討へと進みました。「キャリア発達段階表」とは、「指導・支援内容とキャリア発達との関連表」と内容は同じで、実践でより使いやすいように表を組み替えたものです。

〜指導・支援内容とキャリア発達との関連表〜
領域
指導・支援内容
キャリア
指導・支援内容
キャリア
指導・支援内容
キャリア
段階(W)
段階(X)
段階(Y)
聞く・
話す
教師などの説明や友達の話などを聞いて、内容が分かる。
 
 
 
教師などの説明や友達の話などを聞いて要点をつかむ。
 
 
 
教師などの説明や友だちの話などを聞いて大切な所をメモする。
 
 
 
物語、劇、映画、テレビなどを見たり聞いたりして楽しみ、簡単な感想を話す。
 
 
 
物語、劇、放送などを見たり聞いたりして楽しみ、感想を話す。
 
 
 
物語や小説などを読んだり、テレビや映画などを見たりして楽しみ、感想を話したり、書いたりする。
 
 
 
簡単な放送や録音などの内容の要点が分かる。
 
 
 
放送や録音の内容が分かる。
 
 
 
テレビ、ラジオなどを聞き、必要な情報を得る。
 
 
 
指示や説明を聞く。
 
 
 
必要な場合はメモをとり、指示や説明を正しく聞き取る。
 
 
 
話し手の意図や気持ちを考えながら、内容や指示説明を適切に聞き取る。
 
 
 
事柄の順序をたどって、経験したことを話す。
 
 
 
経験したことを相手に分かるように、できるだけ要点を落とさずに話す。
 
 
 
経験したことを、擬声語や擬態語も交えて的確な表現で話す。
 
 
 
人に尋ねられたときは、はっきり応答する。
 
 
 
場に応じた適切なあいさつや応答をする。
 
 
 
相手やその場にふさわしい挨拶や応答をする。
 
 
 
学級会、生徒会などで、自分の意見をみんなにわかるように話す。
 
 
 
学級会・徒会等で、人の意見を聞き取り自分の意見を話す。
 
 
 
学級会や生徒会等で、人の意見に関連させて自分の意見をはっきりと述べる。
 
 
 
用件を落とさずに話をする。
 
 
 
要件を落とさずに要領よく話をする。
 
 
 
要件を筋道をたて正確に話す。
 
 
 
必要なときにはていねいな言葉を使ったり、共通語で話したりする。
 
 
 
敬語を適切に使う。
 
 
 
相手に応じて、敬語や言葉遣いを使い分ける。
 
 
 
尊敬語、謙譲語などを適切に使って話す。
 
 
 
校内電話や公衆電話の応答になれる。
 
 
 
電話で応答し、必要に応じて伝言を受ける。
 
 
 
電話の取り次ぎや適切な応答をする。
 
 
 

〜キャリア発達段階表〜

キャリア発達の諸能力を養う指導・支援内容一覧(国語科)

※下線のある内容は、複数の能力育成につながる内容であることを示す。
○聞く・話す
 
キャリア設計能力
キャリア情報探索・活用能力
意思決定能力
人間関係能力
W段階
 
□物語、劇、映画、テレビなどを
 見たり聞いたりして楽しみ、
 簡単な感想を話す。
□簡単な放送や録音などの
 内容の要点が分かる。
□指示や説明を聞く。
□用件を落とさずに話しをする。
□事柄の順序をたどって、経験し
 たことを話す。
□学級会、生徒会などで、自分の
 意見をみんなに分かるように
 話す。
□教師などの説明や友達の話など
 を聞いて、内容が分かる。
□人に尋ねられたときは、はっき
 り応答する。
□必要なときにはていねいな言葉
 を使ったり、共通語で話したり
 する。
□校内電話や公衆電話の応答にな
 れる。
X段階
 
□物語、劇、映画、テレビなどを
 見たり聞いたりして楽しみ、感
 想を話す。
□放送や録音などの内容が分かる。
□必要な場合はメモをとり、指示
 や説明を正しく聞き取る。
□要件を落とさずに要領よく話し
 をする。
□経験したことを相手に分かるよ
 うに、できるだけ要点を落とさ
 ずに話す。
□学級会、生徒会などで人の意見
 を聞き取り自分の意見を話す。
□教師などの説明や友達の話など
 を聞いて、要点をつかむ。
□場に応じた適切なあいさつや応
 答をする。
□敬語を適切に使う。
□電話で応答し、必要に応じて伝
 言を受ける。
Y段階
 
□物語や小説などを読んだり、テ
 レビや映画などを見たりして楽
 しみ、感想を話したり、書いた
 りする。
□テレビ、ラジオなどを聞き、必
 要な情報を得る。
□話し相手の意図や気持ちを考え
 ながら、内容や指示説明を適切
 に聞き取る。
□要件を、筋道をたて正確に話す。
□経験したことを擬声語や擬態語
 も交えて的確な表現で話す。
□学級会や生徒会等で、人の意見
 に関連させて自分の意見をはっ
 きりと述べる。
□教師などの説明や友達などの話
 を聞いて大切な所をメモする。
□相手やその場にふさわしい挨拶
 や応答をする。
□相手に応じて、敬語や言葉遣い
 を使い分ける。
□尊敬語、謙譲語などを適切に
 使って話す。
□電話の取り次ぎや適切な応答を
 する。

上記のように、指導・支援内容とキャリア発達との関連付けを進めてきましたが、これは現段階で考えられる関連付けであり、実践を深めていく中でこれからも関連付けが変化すると考えています。今年度も見直しを進めていきます。

平成18年度 研究紀要 実践のあゆみ第10号(PDF)