新しい評価方法の作成
(1)試案作成のねらいと内容について
昨年度は、生徒たちの自立に向けた支援について、「キャリア発達」の視点で捉え、整理することで生徒一人一人の発達段階や発達課題を明らかにして、より実践的な支援に結びつけていこうというねらいで取り組みを進めた。その中で、各教科の指導・支援内容とキャリア発達に関わる諸能力との関連付けを行い、「キャリア発達の諸能力を養う指導・支援内容段階表」を作成した。しかし、「段階表」の作成はできたものの、その活用方法の工夫については今後の課題であった。「キャリア教育」を進めていくことは、個のニーズにせまることである。生徒の実態把握のもと、生徒一人一人の発達段階や発達課題を明らかにしてより実践的な支援に結びつけるためには、キャリア発達の視点からの評価を整理し活用していくことが必要である。そこで、キャリア発達に関わる諸能力に関連した新しい評価方法の試案作成を進めた。
「キャリア発達の諸能力を養う指導・支援内容段階表」は、各教科の「指導・支援内容とキャリア発達に関わる諸能力との関連表」を基に段階を設けて整理した表である。この表はそのまま評価表としての役割が期待できる。各項目についてチェックすることができるように作成してあり、生徒の実態を調べたり、達成できている内容をチェックすることによって能力のバランスを分析したりすることが可能であると考える。これをそのまま活用することもできるが、今年度の研究内容である「人間力」の取り組みから、教師の生徒理解のための評価に加え、生徒の自己理解のための評価方法作成を視野に入れ、より分かりやすく簡潔に生徒の全体像を捉えることができる新たなチェック表を作成することにした。作成にあたっては、昨年度までの取り組みで作成した「キャリア発達の諸能力を養う指導・支援内容段階表」と、平成18・19年度に研究協力校の指定を受けた「知的障害者の確かな就労を実現するための指導内容・方法に関する研究」(国立特別支援教育総合研究所)で作成した知的障害のある児童生徒の「キャリア発達段階・内容表(試案)」を基にした。「キャリア発達に関わる4つの諸能力」についてそれぞれ段階別に分かりやすい言葉で表記したチェックリストを設け、キャリア発達の度合いを数字で表した。個人の平均値をキャリア発達段階から見た「人間力」とし、全体像がつかめるようにした。
(2)キャリア発達段階から見た「人間力」チェック表(試案)について
・チェック表記入例
・内容についての説明
4つの諸能力(人間関係形成能力、情報活用能力、将来設計能力、意思決定能力)それぞれに13の質問項目があり、「キャリア発達段階・内容表(試案)」を基にキャリア発達段階別に整理している。1〜3が段階表によるところの小学部段階、4〜8が中学部段階、9〜13が高等部段階に相当する。段階別に得点が異なり、高等部段階が高得点となっている。
○でチェックを入れると得点が加算され、グラフで表示される。