【平成13年7月2日 山武農業高校生徒会新聞】
農業と農業クラブ 校長 冨澤 哲
「みのる稲穂に富士と鳩、愛と平和を表した、旗はみどりの風に鳴る、土に取りくむ若人の、息と熱とがもり上げた、FFJ・FFJわれらの誇り」これは「FFJの歌」の一番の歌詞です。
ここに、稲穂、みどり、土と農業を代表する言葉(キーワード)が盛り込まれております。
最近、とみに、「安全な食料(稲穂)の供給」や「環境(みどり)の浄化」の問題が叫ばれておりますが、これらを推進するために、農業の果たす役割が見直されてきております。しかし、社会全般をみると、「総論では賛成だが・・・」という消極的な意見が多数を占めていることも確かです。現実の問題として、残念ですが、最近、農業経営者(土に取りくむ)がどんどん減少しております。
皆さんも御存知のとおり、人間の生命活動は太陽エネルギーのもと酸素と水と食物によって維持されます。酸素は緑色植物(葉緑素)から、水は雨水が森林や田畑の地下水となり、食物は一部の水産物を除いて農業生産物として供給されております。
このように、農業は、人々から経済価値がほとんど認められない酸素(空気)と水と緑色植物と太陽光線・大地の力に助けられて食糧を始め衣料や住宅資材を黙々と生産し続けております。この世から農業(みどり)を失えば人間は生存不可能となることは容易に理解できます。
また、私が教職に就いて間もないころ、ある農業の校長先生の講話で「『幸』という字は土と土とが両手を差し出し結んでいるんです。土は幸福を生み出す基なんです。」という、正に「目からうろこが落ちる」ような心境になったことがありました。
このようなことを考えると、人間の生活にとって一番大切な、幸福をもたらす農業の学習、すなわち、土に取りくんでいる皆さんは大きな自信と誇りを持って欲しいと思います。
さて、今年は、土に取りくむ若人の祭典「第五十二回日本学校農業クラブ全国大会」が、全国から約五千名のクラブ員の参加のもと、来る十月二四日・二五日に千葉県で開催されます。「二十一世紀千葉まごころ大会」をスローガンに掲げ、クラブ員の英知を結集した手づくり大会です。
よい機会ですのでここで農業クラブ(FFJ)活動についてもう一度考え、理解してもらいたいと思います。
日本学校農業クラブ連盟は、一九四八年(昭和二三年)、第二次大戦後の学制改革により新制高等学校が発足し、新しい農業教育の方法としてアメリカの「学校の教科で学んだことを家庭の農業で実際に適用しながら学ぶ方法」のホーム・プロジェクトが導入され、生徒の自主的、自発的活動を促進するための組織が作られたのが始まりです。皆さんには遠い昔の話かもしれませんが、私の先輩の教師の話では、発足当時は今のように自動車も無く、舗装されてない悪路を自転車に乗って生徒の家庭を訪問し、農業の指導をして回ったそうです。その後、次第にスクールプロジェクト(専攻学習)に移行し、現在に至ったと聞いております。
また、一九五〇年(昭和二五年)日本学校農業クラブ連盟第一回全国大会が東京都で開催されましたが、今も行われている研究発表や意見発表の他、耕耘機の操作競技、にわとりの解体競技などがあり優勝校には耕耘機などが賞品として授与されたそうです。その後、時代の変化とともに数々の変遷をたどり、一番新しい農業情報処理競技や測量競技、農業鑑定競技、家畜審査競技などの競技会と大会式典及び各種会議で全国大会が成り立っております。
このような大会を本県で開催することは誠に喜ばしいことで、皆さんの高校生活の良き思い出として生涯残るものと思います。
特に、本校は農業情報処理競技会の会場校で、全国から約三〇〇名のクラブ員が参集します。皆農業を学ぶ仲間です。どうか、温かいまごころで迎え、さまざまな人の意見に接し、自分の生き方やあり方などを考えることや社会性を育てる機会にしてくれるよう期待し、大会が成功するよう切望しております。
昨年、本校は県大会のプロジェクト発表で「地域の文化や生活に関すること」及び意見発表の「産業人としての生き方に関すること」で優秀賞を、また、家畜審査競技では乳牛の部で全国大会に出場し、農業鑑定競技は生産技術科の二名が全国大会で優秀賞に輝いております。
今年も本校の意気込みを継承し、日頃培った成果を存分に発揮して、多数の種目が全国大会で活躍することを祈念して筆を置きます。