以下の文章は、始業式で生徒に向かって伝えたことです。(原稿は網掛け部分も含みましたが、実際には省略した部分です。)

 

始業式あいさつ

皆さんおはようございます。

心を込めて伝えますから、是非、しっかりと心を開いて私の言葉を受け止めてください。

ニュースで何度も報道されたので皆さんも知っていると思いますが,昨夜スペースシャトル「ディスカバリー」で宇宙に飛び立った山崎直子さんは、松戸市立第一中学校の出身だそうです。昨日の読売新聞の朝刊には、その山崎さんと中学時代の恩師のエピソードが載っていました。山崎さんは、松戸一中の2・3年生の担任だった天野修一先生に教えられた、高村光太郎の詩「道程」「僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる ああ自然よ 父よ ・・・」という詩ですが、この詩に深い感銘を受けたのだそうです。天野先生は「未知の世界へ踏み出す勇気の尊さ」を伝えようとし、山崎さんは、この詩を、宇宙を目指す長い道のりの中で悩んだときの励みにしてきたのだそうです。

皆さんの中にも、松戸第一中学校の出身者がいると思いますが、母校の先輩の活躍は嬉しいものだと思いますし、誇りに思うことでしょう。教師にとってもまた、このように教え子が成長して活躍する姿をみることは、喜びであり誇りでもあるのです。

さて、そのすばらしいニュースの下に、「中3女子 大麻所持容疑」という記事がありました。「神戸市須磨区の市立中学校3年の女子生徒を大麻取締法違反(所持)容疑で逮捕した。」という記事です。私は、このような記事を見るたびに、この子どもと家族、この子の通学していた学校の先生たちの気持ちを考えます。一つの記事には多くの伝えられない事実があるからです。

私はいつも新聞を読み、子ども達の事故や事件がないかどうか確認するのを日課としています。自分の学校の生徒や、かつての教え子が事故や事件にかかわっていないこと、被害者にも加害者にもならないこと、これが私のささやかな、教師としての喜びです。

私は、皆さんに、ごく普通の生活でいい、すばらしい活躍をしなくてもいい、生きていること、自分を大切にすること、そしてそのそれぞれの「自分」が集まっている学校、社会という関係を大切にして誠実に生きていく人になって欲しいと願います。

今年度は松戸秋山高校としての最後の年になります。多くの卒業生の様々な思いをしっかり受け止めて、素敵な学校にしましょう、素敵な学校生活を送りましょう。それと同時に新しい「松戸向陽高校」の基礎を作っていきましょう。

どんな学校にしたいですか?

今度こそ、100年も200年も残る学校にしなければなりません。そうして、その歴史の中にしっかりと松戸秋山と松戸矢切の歴史を織り込まなければなりません。統合はふたつの学校がなくなるのではありません。ふたつの学校が良いところを持ち寄って、もっと良い学校を作り上げるために私たちが選ばれたと考えましょう。これはとっても素晴らしいことです。今いる生徒と教職員、保護者が理想の学校づくりにかかわれるのですから。新しい校名のように太陽に向かって胸を張って歩き出しましょう。そして、秋山の校歌、2番の歌詞、「江戸川の白き流れに 葛飾の沃野 芳し 聖らなり 永久の学舎 啓けゆく 心の華よ」にあるように、「永久」に存在する学校にしましょう。

 

頭髪や服装、授業態度で注意されているようなレベルにいては駄目です。

そういうくだらない仕事を教師にさせてはいけません。教師には本来の仕事をさせなさい。皆さんの学力や進路実現に全力を尽くせるよう、自分のことは自分で直しなさい。自分で改善が出来ない人は保護者の方に来ていただいて私からも強くお願いいたします。今日から、自分の今までの生活を見直して改善してください。今までもしっかりした生活を送ってきた人は、そのまま真っ直ぐ伸びていきましょう。

 私たちの使命は、秋山高校をしっかりした、誰からも惜しまれる学校にして次の新しい学校に繋ぐことです。みんなの力を貸して下さい。良い学校を創りましょう。

 

2010.4.6

参考資料

道 程

     僕の前に道はない
     僕の後ろに道は出来る
     ああ、自然よ
     父よ
     僕を一人立ちにさせた広大な父よ
     僕から目を離さないで守ることをせよ
     常に父の気魄を僕に充たせよ
     この遠い道程のため
     この遠い道程のため

                  高村光太郎