視覚障害児の教科指導について
〜弱視の児童・生徒に対する指導上の配慮について〜

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 「弱視」といっても、その見え方は人それぞれで個人差があります。同じ程度の視力でも、屈折異常の有無やまぶしさの程度、視野の広さや中心暗転の有無等からその見え方は異なるのです。弱視児のこうした見え方の個人差を理解することは、まず何よりも大切になります。
 弱視児の見え方は、ピントがあっていなかったり、ぼやけて見えにくくなっていたり、まぶしくて見えにくくなっていたり、視野の一部がかけていたりと様々です。見え方を理解することは、児童生徒一人一人により良い環境を整備することにつながります。
 弱視児は、目を対象物や教科書に極端に接近させて見ています。教科書に顔をすりつけるようにしてみている児童生徒も少なくありません。目を対象や文字に近づけることによって、物や文字を拡大して見ているのです。しかし、弱視児は目を近づけると誰でも細かい物まで見えるというわけではありません。特に遠視を伴うような弱視児は、遠くも見えにくいし、ある距離以上目を接近させても見えにくいのです。また、弱視児の中には、対象に視線を真っ直ぐ向けず、顔を傾けて斜めの方向から見ている者もいます。これは中心に暗点がある場合や角膜の中央が濁っているような場合には、その部分は使えませんから、そこを避けて見ようとするわけです。弱視児にとって、「もっと目を離しなさい。」「首を傾けないで真っ直ぐ見なさい。」というような指示は、適切ではありません。
 弱視児は見えにくいけれども、視覚を活用した学習活動が可能です。よい状態で視覚を活用できるような条件を整えることが大切です。

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1.健常者の風景
健常者が正門から校舎を見た写真
2.羞明(まぶしさ)がある場合
羞明(まぶしさ)を示した写真です。
画像では白くなっていますが、実際は「チカチカ」光って眼瞼(まぶた)を開くことができずに、眼瞼を細めた状態でものを見ようとします。
3.ピントが合っていない場合(遠視、近視など)
ピントが合っていない写真です。
ピントを合わせるために、眼鏡をかけて調節します。
4.濁っている場合(白濁)
濁った写真です。
5.視野欠損がある場合(黄斑変性など)
中心部の視野欠損を示した写真
6.視野狭窄がある場合(網膜色素変性症)
視野狭窄を示した写真
視野狭窄ですが、上の図で透明な部分は認識できない部分です。

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1.網膜像の拡大
 弱視児の視覚によって対象をはっきりと明確に認知させるためには、網膜像を拡大してやることが大切です。対象物に目を接近させるのも有効な手段ですが、この他に、文字や絵を直接手書きで拡大したり、拡大コピー機で拡大したりする方法(拡大教材)や弱視レンズ(ルーペ)や拡大読書器(CCTV)を活用して拡大する方法があります。拡大教材は、弱視児の視力等に応じた倍率のものを用意すれば、広い視野を確保しながら見ることができます。見る意欲に乏しい児童や疲労しやすい児童には大変有効です。しかし、拡大教材でも十分な倍率が得られないような場合には、拡大読書器を用いるのが有効です。
 弱視レンズには、近用と遠用とがあります。近用レンズには、卓上型手持ち型、眼鏡型等に分かれています。遠用は単眼鏡のことを言います。児童の実態に応じた型や倍率のものを選定して活用させることが大切です。拡大教材と弱視レンズは、どちらか一方をというより用途や目的や疲労度に合わせ、使い分けることが必要とされます。
視距離と網膜像の関係を示した図です。
同じ大きさの対象を近づけると、網膜像は大きくなる。
2.単純化とノイズの除去
 弱視児にとって見えにくいものの一つに、一つの画面にたくさんの情報が入り乱れて書き込まれているようなものがあります。代表的なものに、地図があります。地図は、地形や鉄道、道路、市街地、史跡等非常に多くの情報が一つの紙面に煩雑に書き込まれています。これらの情報を選択して見るのは、弱視児にとって苦手なものの一つです。こうした複雑で煩雑な情報を見やすい情報として提供するためには、海岸線や等高線等複雑に入り乱れているものを単純に書き改めたり、地図に書き込む情報を必要最小限に限定したりする必要があります。また、注意してほしい情報を強調して色分けしたり、太い線を用いて表したりすることも大切です。
3.地と図のコントラストの増強
 単純化やノイズの除去と共に、図と地のコントラストを増強させて、明確な網膜像を得ることができるようにすることも大切です。このとき、強調としたい文字だけでなく、背景色のコントラストも考慮しないと、かえって見えにくくなることもあります。文字にアンダーラインなどの線を引くときなどに気をつけたいものです。
4.色彩への配慮
 弱視児の中には、色彩への反応が弱い児童もいます。弱視児に見えやすい教材を提示するためには、色彩に関して
(ア) 同系色で彩度の低い色を隣り合わせに用いない。
(イ) 同系色を用いる場合には、2度以上の明度差をつけるよう心がける。
(ウ) 色と色の境界線には、輪郭線を入れる。
などの配慮が必要である。
 弱視児は、色彩への反応が弱いからといって、教材などに色を用いないというのは適切ではありません。弱視児にとっても色彩は認知しやすい手掛かりとして大切です。(ア)〜(ウ)に配慮して、積極的に活用することが大切です。
 また、板書で用いるチョークの色については、できるだけコントラストの明確な白または黄色を用い、赤、青、緑等のチョークはできれば避けた方が良いでしょう。
5.照明のコントロール
 適切な明るさを保つことも見えやすい条件を整える上で重要です。照度も基本的には一人一人に合ったものを用意する必要がありますが、全体照明だけでは対応できませんから、蛍光灯スタンド等を有効に活用するのが良いでしょう。また、自然採光は、廊下側と窓側では異なります。天候や採光条件の違いによって、廊下側だけの照明を点灯させる等の調節ができるように工夫することも大切です。
 疲労しない学習環境の整備
6.疲労しない学習環境の整備
 弱視児の場合、視距離の条件が視覚に障害がない者と異なるので、JIS規格よりやや高めの机が適切であると言えます。高さは個人差があるので、弱視児に実際に選ばせて使用状況を観察し、指導者がその高さを吟味する必要があります。
 弱視児は、近くで対象を見ようとするので、読書や書字の姿勢が良いとは言えません。姿勢が悪いと疲れやすくなります。傾斜のある台に本をのせて読んだり、書いたりできる書見台や書写台を活用しましょう。また、晴天の場合には、直射日光によるまぶしさや見えにくさが加わることもあります。
教室には、ブラインドやカーテンを備え付けるようにしましょう。
7.適切な学用品の選定
 学用品としては、ノート、鉛筆、色鉛筆、消しゴム、定規、三角定規、分度器等があげられます。
 弱視児に適した学用品の選定の条件は、「できるだけ見やすくて使いやすいもの」です。まずは、市販品のなかで使いやすいものを選定してみましょう。最近は、鉛筆だけでなく、シャープペンシルなども2Bや4Bといった芯も市販されています。100円ショップにも、カラフルで見やすく使いやすい定規類があります。市販のノートも罫線を太くするなどして手を加えることによって使いやすいノートになります。次に、弱視児・者のための専門店で選定する方法があります。白黒反転の定規罫線の太さや行の幅が選べるノートなどがたくさん揃っています。
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1) 香川 邦生編著:改訂版「視障害教育に携わる方のために」 慶應義塾大学出版会 2002
2) 香川 邦生他:「視力の弱い子どもの理解と支援」 教育出版 
3) ロービジョンQ&A編集委員会編:「ロービジョンQ&A」 大活字 2004
4) 佐藤 康正編著:「視覚障害心理学」 学芸図書 1996
5) 山本利和・松平敦子著:「目の不自由な子どもを育てるヒント」 2004
6) 文部省:「観察と実験の指導」 慶應義塾大学出版会  1994
7) 中野 泰志:弱視児の教育的な視機能評価と配慮
8) 文部科学省:色覚に関する指導の資料

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Since Date:2003/02/01 Last Update:2010/09/17
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